差別化と差異化の違い ~自社の強みをアピールするには

差別化と差異化は、よく似ている言葉で混同して使われているものの、厳密には異なった意味があります。とりわけ差異化は自社の強みをアピールする上で重要な概念として考えられています。

差異化とは何か?その方法とは?差別化との関係から解説していきます。

差別化と差異化

差別化と差異化には同じような意味がありますが、前者には「二つ以上のものに優劣の判断をする」というニュアンスがあり、後者には「純粋に違うものとして区別する」という印象があります。

例を挙げれば、家電などの新製品が発売される際に展開されるキャンペーンは、前モデルよりも現モデルが優れていることをアピールする差別化戦略です。大企業がマスメディアを活用して行っているものの多くは差別化戦略だといえるでしょう。

差別化よりも差異化が重要?

一般的に企業が自社の強みを見つけようとする際、競合他社をリサーチし、自社にあって他社にはないものを見出そうとします。他社にはなく顧客のニーズがあることも確認されれば、それが強みとして差別化の材料として使われることになります。

ところが競合他社と差別化できていた点が模倣されてしまうと、自社の強みであったものがたちまち無効化されてしまいます。かつての強みは他社と共通する要素になってしまい、もはや差別化の材料とはなりません。これを同質化戦略と呼んでいます。

こうしたせめぎ合いは、同じ市場において競い合いを続ける以上、いつまでも繰り返されることになるのです。便利さや美味しさ、機能性の高さなど、特定の商品やサービスが目指すベクトルへと終わりのない戦いが繰り広げられるという意味で、差別化戦略は価格競争と似ているといえるでしょう。

他方、差異化とは、差別化のベクトル上で行われていたレースから逸脱することを意味します。競合他社による同質化戦略が及ばない、つまり模倣を寄せ付けない施策が必要となるわけです。同質化戦略のもとでの差別化は消耗戦です。差別化ではなく、差異化のビジネスモデルが模索されなくてはなりません。

差異化の方法

では、差異化はどうやって行われるのでしょうか。
例えば、マーケティングを、商品企画へと落とし込むためのフレームワークとして知られる「4P」が参考になります。「4P」の「P」とはそれぞれ以下の4つの語の頭文字をとったものです。

Product:製品の品質やデザイン
Price:価格
Place:流通経路や販売場所
Promotion:販促やプロモーション戦略

この4つの指標をもとに、例えば、斬新な機能や使いやすさを備えているか(Product)、思い切った価格設定ができないか(Price)、これまでにない販売経路を利用できないか(Place)、SNSを利用した双方向的なコミュニケーションが展開できないか(Promotion)、という具合に、同質化が難しい差異化戦略を検討することができます。

差異化戦略が成功した例として知られるのが、2003年から電卓や電子レンジ、パソコンなどの商品を展開した「amadana」ブランドです。「4P」のうち、ProductとPriceにおいて差異化を実現し、当時多くの顧客を獲得しました。モダンで和の佇まいを備えたデザインは、ターゲットを市場全体の1%に絞る画期的なもの(Product)。生産量が少ないため、価格はかなり割高な設定でしたが、長年モデルチェンジも価格の変更もすることなく、異例の長さとなった保障期間とともに販売され、ヒット商品となりました。



同質化戦略に基づく差別化という不毛な競争は市場の疲弊を招くことになり、生産者、消費者の双方にとって利益がありません。差異化を見出すことは簡単なことではありませんが、市場が健全に発展するためにも、自社の強みをアピールするには、差異化への早急なシフトチェンジが求められます。